猫に寄せて

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ウェスティ事件

原文: Westy's Story - The Humane Society of the U.S.

ザ・ヒューメイン・ソサエティ・オブ・ザ・ユナイテッド・ステイツ/ヒューメイン・ソサエティー・インターナショナルより転載許可済 
訳 H.W.エリオット (Text reprinted by permissioin of The Humane Society of the United States/Humane Society International; translation from the English provided by H.W.Elliott)

ジェニー ペース著


ウェスティという名で程なく有名になる猫が、 私の勤めるデンバー近郊の動物救急病院に運び込まれたのは2001年のメモリアル・デイ(戦没者慰霊の祝日)でした。   それはあまりにも出来過ぎていました。  ウェスティは事実上、戦火を潜り抜けてきたのです。   目撃者によると、ウェスティは火をつけられた状態で車の窓から放り投げだされたのでした。



ウェスティはまさに戦争の犠牲者のようでした。   この大きなトラ猫は、体全体の40%に3度の火傷を負い、焼けちぢれた毛と煙の匂いがしました。   ウェスティの毛は殆どが体に溶け込み、後ろ足全体は筋肉まで焼け焦げ、ヒゲは焼け落ちていました。   私はその夜、当直看護婦の内の一人で、獣医師達と共にウェスティの容体を安定させ、傷の具合を調べていました。   ウェスティを救えるかどうかは、誰にもわかりませんでした。



この動物病院は、外科・内科の専門家達により構成され、 毎日のように極端な症状や重症を負った動物を扱っていることから、 最初に取った決断は、ウェスティに苦痛のない状態を作り、飼い主に名乗り出る時間を与えることでした。   病院に運び込まれてから2日目、ウェスティの容体が安定してきたので、麻酔をかけて傷口を消毒することができました。   感染を防ぐため、ウェスティに触れるものは全て殺菌処理をしなければなりませんでした。   また、ウェスティは自力で食べることができなかったので、食べ物を流し込むチューブを装着させました。   獣医師達が手術により焼け焦げたウェスティの皮膚をどれくらい残せるか、 それを手術前に吟味するのに数日かかりました。



一方、獣医師達はマスコミに連絡をいれました。   どのメディアもウェスティの容体に同情してくれました。   こうしたマスコミの注目により、ウェスティは一躍地元の有名人となり、動物虐待に対する呼びかけの発端となりました。   病院にはウェスティを気遣う人々からの電話が鳴り続き、遠くはドイツとフランスからも電話がかかってきました。   何百人という人が、その傷ついた猫を喜んで里子に貰いたいと名乗りを上げました。   さらに、犯人逮捕に結びつく情報提供者の為の報奨金5000ドルが地域住民から集まりました。



2001年6月8日、コロラド州ウェストミンスターの警察が、 ウェスティ攻撃に関連する動物虐待の罪で二人の少年を逮捕したことを発表しました。   この二人は、ティーン・エイジャーで、年は16歳と17歳、 中流階級の住宅街ウェストミンスター地区(ウェスティの名の由来となりました)において猫に火をつけたということでした。   16歳の少年は、恐怖を感じた両親の手で警察に引き渡されました。



容疑者は、アメリカ国内において多数を占める動物虐待者の特徴を幾つか併せ持っていました。   年齢と性別です。   ヒューメイン・ソサエティが最近発行した2001年動物虐待事件レポートによると、 昨年1月から12月までの間に検証された1677件の意図的な動物虐待は、その20%がティーン・エイジャーによるものでした。   この問題のあるティーン・エイジャーの中でも大多数を占める95%が少年でした。   その年の動物虐待/社会暴力意識週間において、ヒューメイン・ソサエティが10代の若者に焦点を当てたのも、 そうした統計を念頭においてのことでした。



10代の若者に焦点を当てるのは大切です。   心理学者、犯罪学者、社会学者が近年認識し始めたこととして、 ティーン・エイジャーの動物虐待は、将来において人間に対する暴力行為を行う可能性のある危険信号だということです。   ヒューメイン・ソサエティのファースト・ストライク・キャンペーンは、 暴力の連鎖をコントロール不能な状態に発展する前に断ち切ることを目的としています。   プログラムが行っている変革方法の一つとして、国会議員と共に動物虐待法を強固なものとする働きかけです。



コロラド州の虐待法は、確かにもう少し厳しいものとなって良いはずです。   というのも、この州では動物に対する虐待行為は軽罪でしかなく、 ウィエスティを攻撃したティーン・エイジャーは2日間の投獄、500ドルの罰金、 そして有罪判決を受けた後に18ヶ月の保護観察の刑に服すだけなのです。



その一方で、ウェスティは素晴らしい闘争精神と生きる意欲とを見せていました。   ウェスティは5つの大手術をうけました。 2度の皮膚移植で、右後ろ足をを守り、胸郭の火傷部分をふさぎました。   左足と尻尾は火傷が酷く救うことが出来なかったため、切断することになりました。   私はウェスティの担当看護婦となり、入浴させたり、包帯を取り替えたり、また運動機能回復のための治療の為に、 一日4時間をウェスティと共にすごしました。  



結局、ウェスティの飼い主は名乗りを上げなかったので、2001年9月28日、 私がウェスティを里子に迎えることができました。   ウェスティの里子縁組発表記者会見も開かれました。   その記者会見には、民主党議員のディアナ ハナも参加しました。   ハナ議員は、このとき既にコロラド州において2度目の動物虐待を犯した場合は重罪とする「ウェスティ法」の議案を準備していました。   この議案は、翌年1月に発表され、ウェスティは議案通過の運動をするために州都へ赴きました。     上院においてこの議案は通過しましたが、同様の法案は下院で却下されてしまいました。   現在、上院で通過した議案に対する下院公聴会を待っているところです。



ウェスティは、動物の権利を訴える活動をしない時は、沢山のおもちゃと猫用のベッド、 そして多くのファンから寄せられた手作りのキルトに囲まれて、楽しく過ごしています。    彼はすっかり普通の猫と同じように振る舞います、 それはまさに奇跡を見るようです。



  筆者ジェニー ペースは、コロラド州ウィートリッジのウィートリッジ動物病院で働く、獣医科技師です。

Trasnlated by H.W.Elliott

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